拒食&過食/摂食障害   2003/10/26(Sun)

南太平洋の小島=フィジー島では1995年にテレビ放送が開始され、イギリス、ニュージーランド、アメリカのTVドラマなどがみられるようになりました。以降、摂食障害におちいる人が急増中であると聞きます。
過去、フィジー島では男女ともにガッチリした筋肉質の体型が好まれていました。ところがテレビ放送開始3年後の1998年の調査では、10代の女性がダイエットに関心を持ち始め、約4分の3の少女が「自分を太りすぎだ」と感じ、ティーンエージャーの15%が「体重増加を嫌って嘔吐したことがある」と答えています。
こうした例からも、拒食が“文明病”の側面を強く持っているのはたしかでしょう。しかし注意しなければいけません。治療的に接する場面においては“文明病”であるという前提で接しても意味はありません。
拒食は過食と対になりがちです。ダイエットを目的とした食事制限が拒食へと進んでしまい、その後に拒食の反動としての過食が現れる傾向が目立ちます。また拒食と過食を反復する混在型も少なくありません。したがってこれらを総称して摂食障害と呼ぶのが通例になりました。
遺伝的な要因や体質、または身体的な問題が関与しているとする意見もありますが、やはり心理的なものが最大の原因だと想定するのが適切でしょう。心理的原因を正しく理解した治療的対応を実現するためには、親御さんがカウンセリングを受けるのが最善です。本人がカウンセリングを受けないとしてっも、親御さんがカウンセリングを通じて心理的背景への理解を深めて適切な対応をするなら状況は好転します。
心理的原因をごく大雑把に説明するなら、自信のなさです。それは単に体型への自信のなさではなく、自分自身の存在のすべてへの自信のなさです。その自信のなさの原因は親の愛の歪みであると考えてよいでしょう。
気をつけてください。自信のなさは「自信を持ちなさい」と叱咤激励されたところで改善するものではありません。そのような叱咤激励をしたくなってしまう親の側の心持への深い反省がないかぎり、問題は解決しません。
摂食障害へと進んでしまうのはほとんどが若い女性であり、しかも能力の高い、意志の強い子である場合が目立ちます。
摂食障害は、典型的には次のような経過をたどります。
家庭的な問題(指示命令が目立つ圧迫型の家庭など)や学業や友人関係などの困難を、努力と頑張りで克服してきた女の子が、なんらかのきっかけで強い挫折感にとらわれると、過剰で事実上達成不可能な目標を自分に課すとともに、容姿を極端に気にするようになります。ここから過剰なダイエットが始まり、体重減少、食習慣の異常が進みます。こうして飢餓状態に似た状態におちいった体は、逆にエネルギー備蓄の機能を高めますから、大変に太りやすくなってしまうために、ちょっと食べる量が増えただけでも体重増加が目立ってしまう危険があります。したがって肥満してしまうことへの恐怖はますます募り、拒食傾向が深まります。
とはいえ食べなければ生きられないのが生物です。拒食を維持するのは心身ともに大変なストレスですから、反動としての過食が引き起こされがちです。すると「拒食→→反動としての過食→→過食してしまった自分への自罰の意味も含めた嘔吐」という悪循環にはまり、自分の心身をコントロールできないがための無力感も深まります。
そこまでの状態にいたれば、栄養障害をベースとして体調も内臓機能も悪化しています。しかしそれらの「問題」を指摘したとしても、本人はまず聞き入れません。かえって状況を悪化させる危険があると認識しておいたほうがよいでしょう。
摂食障害では、薬物乱用(医師が処方するものも含む)、万引き癖、自傷行為、家庭内暴力などの問題も併発しがちです。
摂食障害は複雑で深い、家庭のあり方そのものに根ざす心理問題を背景として発症するのが通例ですから、通常の医療では対応できないと認識してください。投薬や栄養点滴などでその場しのぎの対応をするなら、状況はさらに悪化してしまう危険があります。
数ヶ月以上続く摂食障害であるなら、心理カウンセリングは必須です。念をおしますが、どうしても必要なのは本人ではなく、親御さんのカウンセリングです。



  BACK 1   NEXT 1

MOMO'S WEB DESIGN