シンナー   2003/10/26(Sun)

シンナーでラリった状態は決して心地よいものではありません。意識が曖昧になり、認識能力も判断力も行動意欲も低下して、現実感のないままに時の流れに身をまかせてしまいます。適量のお酒に酔ったときのような開放感や高揚感などもとよりありません。むしろ漠然とした根深い不快感に支配される状態だといったほうがよいでしょう。
そうであるにもかかわらず、なぜシンナーでラリったりするのでしょう。
さまざまな理解の仕方があるのでしょうが、私は「そんな不快な状況でも、正気で日常を過ごすよりもまだマシだからだ。正気の日常は、それほどに耐え難い不安・不快・焦燥感・無力感に支配されてるからだ」と受け止めています。
シンナー吸引。明らかな逃避です。しかし、たしかに“弱い精神”という事情もあるのかもしれませんが、他方ではシンナーに逃避せざるを得ない事情もあることを考慮しなければ、適切な対応はできません。
シンナーに逃避する子は、まず間違いなく「世間は不快であり、理不尽であり、自分は世間に受け入れられていなくて、どうせ何をやってもうまくいかない」と思い込んでいます。また、ここがもっとも大事なのですが、こうした思い込みには、その子の親の生き方・人生観あるいは子どもへの接し方・育て方が決定的といってよい影響を与えています。
シンナーに逃避する子どもに対応するためには、以上の点を厳しくみつめる必要があります。シンナーを黙認していてよいとまではいえませんが、親や周囲の大人のあり方を問うことなしに、闇雲に禁じたり抑制したりしても、よい結果には結びつかないと考えておくべきでしょう。
私がこれまでに相談を受けたシンナー関連のケースでは、どの場合にも「家庭を居心地よくする」ことを第一目標としてもらいました。「家庭の居心地よさ」とは、親、わけても母親の「心持の安定」とほぼ同義語です。
シンナー吸引問題は、抑制や禁止や監視、あるいは入院治療によって解決可能な場合もあるでしょう。しかしそうした対応がうまく機能しない場合には、まずは親がカウンセリングを受けることによって解決の道筋を見出すことが必要です。



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